歯髄温存療法(VPT)とは|神経を残すと歯の寿命はどう変わるか つなしまファミリー歯科

精密診療

監修:田中雄紀 歯科医師 / 医療法人社団LOHAS つなしまファミリー歯科


「虫歯が深いので、神経を取りましょう」——歯科医院でそう告げられたとき、それがどれほど大きな意味を持つ言葉か、立ち止まって考える方は多くありません。この記事では、歯の神経(歯髄)を取ることが歯にとって何を意味するのか、そしてその神経をできるだけ残すための選択肢である歯髄温存療法(VPT)について、綱島の歯科医院の視点で解説します。

歯髄は、歯にとっての「水を運ぶ管」

歯の中心には「歯髄(しずい)」と呼ばれる組織があり、一般に「神経」と呼ばれています。ただし歯髄の役割は、痛みを感じることだけではありません。歯髄には血管も通っており、歯という組織に栄養や水分を届け続ける、いわば樹木の幹の中を通る水分の通り道のような役割を果たしています。

樹木は、幹の中の管が切られてしまうと、外見はしばらく変わらなくても、内側から徐々に水分や栄養を失い、もろくなっていきます。歯も同じで、歯髄を取り除くと、その歯には栄養や水分が届かなくなります。痛みを感じる神経も同時に失われるため、トラブルに気づきにくくなる一方で、歯自体は少しずつもろく、割れやすくなっていく傾向があるとされています。

神経を取った歯の、その後に起こりうること

  • もろくなり、割れやすくなる:栄養や水分の供給が絶たれることで、歯質の強度が低下しやすいとされています。
  • 変色することがある:神経を失った歯は、時間の経過とともに色が変化することがあります。
  • 再発に気づきにくい:痛みを感じる仕組み自体が失われているため、内部で問題が進んでいても自覚症状が出にくくなります。

神経を取る治療は、歯を残すための最後の手段として大きな価値がある一方で、「抜歯の一歩手前」の状態に近づく治療でもあると、当院では考えています。だからこそ、可能な範囲で歯髄を残せないかを検討することには意味があります。

歯髄温存療法(VPT)という選択肢

VPT(Vital Pulp Therapy)は、虫歯が深く、神経に近い、あるいは一部到達しているような状態でも、歯髄をすべて取り除くのではなく、可能な範囲で保存することを目指す治療の考え方です。MTA(Mineral Trioxide Aggregate)と呼ばれる生体親和性の高い材料などを用いて、感染した部分を慎重に取り除きながら、健康な歯髄を保護する処置を行います。

すべての歯に適応できるわけではありません

ここで大切なお伝えしたいのは、VPTはすべての虫歯に適応できる治療ではないという点です。歯髄の炎症の程度、感染の広がり方、歯の状態などを総合的に診査したうえで、保存できる可能性があるかどうかを個別に判断する必要があります。神経を確実に残せるとお約束することはできません。それでも、可能性がある場合には、その選択肢を丁寧にご説明することが、患者さんの歯の寿命を守るうえで重要だと考えています。

自費診療となる理由

VPTは、精密さが求められる処置です。ラバーダムによる感染源からの隔離、マイクロスコープを用いた拡大視野での丁寧な処置、そしてMTAをはじめとする材料のコストなど、通常の治療より時間と設備を要するため、自費診療として行っています。目先の費用だけでなく、神経を残せる可能性がある歯を、できるだけ残すという選択肢のひとつとしてご検討いただければと思います。

VPTの治療の流れ

  • 診査・診断:レントゲンや冷温刺激への反応などから、歯髄がどの程度健康かを確認し、VPTの適応があるかを判断します。
  • ラバーダムによる隔離:治療する歯にゴム製のシートをかけ、唾液に含まれる細菌が処置部位に入らないようにします。神経を残す治療では、この無菌的な環境づくりが結果を左右する重要な工程です。
  • マイクロスコープ下での感染部分の除去:拡大視野で虫歯や感染した歯髄の一部だけを慎重に取り除き、健康な歯髄をできるだけ残します。
  • MTAによる保護と封鎖:露出した歯髄をMTAで覆い、細菌が入り込まないよう緊密に封鎖します。
  • 経過観察:処置後は痛みの有無や歯髄の反応を数週間〜数ヶ月かけて確認し、問題がなければ最終的な詰め物・被せ物へ進みます。経過によっては、通常の根管治療へ切り替える判断をすることもあります。

費用の目安

当院の歯髄温存療法(VPT)は税込55,000円が目安です。参考として、神経を取る精密根管治療は抜髄44,000円〜、感染根管処置66,000円〜となります。いずれも自費診療で、保険外診療の再診料(1,100円/回)が別途かかります。適応の可否や最終的な金額は、診査のうえでお見積りします。

よくある質問

Q. 処置後に痛みが出ることはありますか?

A. 処置後数日は、噛んだときの違和感や軽い痛みが出ることがあります。多くは時間とともに落ち着くとされていますが、強い痛みや腫れが続く場合は歯髄の炎症が進んでいる可能性があるため、早めにご連絡ください。

Q. VPTがうまくいかなかった場合はどうなりますか?

A. 経過観察の中で歯髄の炎症が治まらないと判断した場合は、通常の根管治療(神経を取る治療)へ移行します。VPTを試みたことで、その後の治療が難しくなるわけではありません。

綱島で「神経を残す治療」をご検討の方へ

「虫歯が深いと言われた」「できれば神経を取りたくない」という方は、一度ご相談ください。すべてのケースで神経を残せるわけではありませんが、可能性がある場合には選択肢としてご提案します。噛み合わせを整える咬合治療についても「削らない」だけじゃない|咬合治療で噛み合わせを整える理由で解説していますので、あわせてご覧ください。歯を失った場合の治療法比較はインプラント治療を本当に理解していますかでご紹介しています(VPTは、その”最後の選択肢”をできるだけ先へ遠ざけるための治療という位置づけです)。

当院の精密診療(ラバーダム・マイクロスコープ)については長持ち治療(精密診療)について詳しくはこちらをご覧ください。

ご相談・ご予約は、お電話(045-717-9655)またはウェブ予約(24時間受付)からどうぞ。

まとめ

  • 歯髄は歯に栄養と水分を届ける、樹木でいう幹の水分の通り道のような役割を持つ。
  • 神経を取ると歯はもろくなりやすく、変色や再発に気づきにくいといった変化が起こりうる。
  • VPT(歯髄温存療法)は、条件が合えば神経を可能な範囲で保存する選択肢。
  • すべての歯に適応できるわけではなく、個別の診査・診断が前提。
  • 精密さが求められるため自費診療となる。

ウェブ予約・お問い合わせ

初めての方のご予約は、下記のウェブ予約から24時間受け付けています。お電話(045-717-9655)でも承ります。綱島・日吉・大倉山エリアからご来院いただけます。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療結果を保証するものではありません。VPT(歯髄温存療法)の適応可否や成功の見込みには個人差があり、すべての方に適用できるものではありません。治療方針は、必ず歯科医師による診査・診断のうえで決定されます。気になる症状のある方は、自己判断せずご相談ください。

精密診療のご相談・ご予約

この記事の内容について、綱島駅・日吉駅からアクセスできるつなしまファミリー歯科(横浜市港北区綱島東4-1-5)で直接ご相談いただけます。「まだ受けるか決めていない」段階でのご相談も歓迎しています。

費用の目安(税込)

  • 精密根管治療:抜髄 44,000円〜/感染根管処置 66,000円〜
  • 歯髄温存療法(VPT):55,000円
  • ダイレクトボンディング:35,200円

※自由診療(保険適用外)の項目は税込の目安です。お口の状態により内容・金額は異なり、確定額は診査後のお見積りでご案内します。料金は改定される場合があります。

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