監修:田中雄紀 歯科医師 / 医療法人社団LOHAS つなしまファミリー歯科
「虫歯になっても、治療すれば元通り」——そう思っている方は少なくありません。けれども、削って詰めたり被せたりした歯は、残念ながら健康な状態に戻ったわけではありません。歯の寿命には「順番」があり、治療を繰り返すたびに、その順番は少しずつ先へ進んでいくと考えられています。この記事では、なぜ「削る回数を減らすこと」が歯を長く残す鍵になるのかを整理します。
失った歯質は元に戻らない
まず知っておいていただきたいのは、虫歯や歯周病で失われた歯の組織(歯質)は、自然に再生することはないという点です。治療とは、傷んで失われた部分を削り取り、そこに人工物(詰め物・被せ物)を置き換える作業です。つまり「治した」というより「置き換えて補った」状態に近いといえます。
そして人工物は、天然の歯そのものにはかないません。どんなに精度の高い治療でも、境目(歯と人工物の継ぎ目)はどうしても生まれます。この境目こそが、次のトラブルの入り口になりやすい場所とされています。
治療のたびに進む「歯のステージ」
歯の一生を段階(ステージ)で見ると、治療を重ねるほど後戻りできない方向へ進んでいく傾向があります。おおまかには次のような流れが考えられています。
- ステージ1: 健康な歯(何も手を加えていない状態)
- ステージ2: 小さな詰め物(初期の虫歯を最小限に処置)
- ステージ3: 大きな被せ物(削る範囲が広がった状態)
- ステージ4: 神経を取る治療(歯の神経=歯髄を除去)
- ステージ5: 抜歯(歯を残せなくなった状態)
特に注意したいのがステージ4です。神経を取った歯は、栄養や水分が届かなくなり、もろく割れやすくなる傾向があるとされています。痛みを感じにくくなるため異変にも気づきにくく、「神経を取った歯は抜歯に一歩近づいた状態」と考えられています。一度進んだステージは、原則として前の段階には戻れません。だからこそ、できるだけ手前のステージで止めておくことが大切なのです。
詰め物・被せ物は「一生もの」ではない
治療した歯が再び虫歯になることを「二次う蝕(にじうしょく)」と呼びます。前述の境目にプラーク(細菌のかたまり)がたまると、そこから内側で再び虫歯が進むことがあり、しかも自覚しづらいという特徴があります。二次う蝕が見つかれば、多くの場合は一度削ったところをさらに大きく削り直すことになり、これがステージを一段進めてしまう原因になります。
また、詰め物・被せ物そのものにも耐用年数の目安があります。あくまで一般的な目安で個人差が大きいものですが、参考までに挙げると次のとおりです。
| 修復物の種類 | 寿命の目安 |
|---|---|
| 銀歯(被せ物・大きめ) | 約8年 |
| 小さい銀歯(詰め物) | 約6年 |
| プラスチック(コンポジットレジン) | 約5年 |
この数字が意味するのは、「一度治療したら安心」ではなく、「年月とともにやり直しの時期がくる可能性がある」ということです。やり直しのたびに削る量が増えれば、それだけステージも進みやすくなります。
残っている歯の数が、将来の生活を左右する
日本人の歯は、加齢とともに失われていく傾向があります。80歳の時点で残っている歯が少ない方も多いのが現状とされています。一方で、しっかり噛める歯が多く残っている方ほど、食事を楽しめたり、栄養状態が保たれたりと、生活の質や全身の健康にも良い影響が期待されると考えられています。
つまり「歯を守る」とは、単に一本の歯の話ではなく、これから何十年も続くご自身の暮らしそのものを守ることにつながる、といえます。
「削る回数を減らす」という視点で治療を選ぶ
ここまでを踏まえると、歯の寿命を守るうえで大切なのは、次の2点に集約されます。
- そもそも虫歯を作らない・進めない(予防と早期対応)
- 治療する場合も、次のやり直しをできるだけ遠ざける
この「次のやり直しを遠ざける」という視点で、保険外(自費)診療が選択肢のひとつになります。押し売りをするつもりはありませんが、患者さんご自身の歯を長く残すという目的から見て、自費診療には次のようなメリットが期待されるためです。
1. 精度の高い治療で境目のリスクを抑える
二次う蝕の入り口になりやすいのは、前述のとおり歯と人工物の「境目」です。時間をかけた精密な処置や、適合性の高い素材を用いることで、この境目のすき間をできるだけ小さくし、再び虫歯になるリスクを抑えることが期待されます。
2. 神経をできるだけ残す配慮
ステージ4(神経を取る治療)は、歯の寿命にとって大きな分かれ道です。だからこそ、可能な範囲で神経を保存する方針を取ることには意味があると考えられています。丁寧な診断や配慮のある処置は、この「神経を残せるかどうか」の可能性を高める一助になりえます。
3. 再治療になりにくい素材という選択
セラミックなどの素材は、汚れがつきにくく、境目の適合性にも配慮しやすいとされ、結果として二次う蝕のリスクを抑えることが期待されます。プラスチックや銀歯と比べて、やり直しの時期を遠ざけられる可能性があるという点が、歯の寿命という観点からのメリットです。前歯の見た目と機能を両立させたい場合の考え方は、前歯のセラミック治療のページもあわせてご覧ください。
もちろん、自費診療がすべての方に必要というわけではありません。どの治療が適しているかは、お口の状態やライフプランによって変わります。選択肢を並べて、納得したうえで選んでいただくことが何より大切だと考えています。ご自身に合った進め方については、治療プランの考え方も参考になさってください。
綱島で「歯を長く残す治療」を考えるなら
つなしまファミリー歯科では、綱島・日吉・大倉山エリアの皆さまに向けて、今ある歯をできるだけ長く残すことを大切にした診療を心がけています。「もう何度も治療している」「削る回数を減らしたい」といったお悩みがある方は、一度ご自身のお口のステージを一緒に確認してみませんか。
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本記事は歯や治療に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療方針を確定するものではありません。記載した寿命の目安や治療の効果には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。症状や治療方針については、必ず歯科医師による診察を受けたうえでご判断ください。


